坊主の独り言

「ま いいか」
ものがたり

いろんなお宅へお伺いしていると、いろんなことがあります。
1話「玄関までの道」
2話「戸を開けると」
3話「仏壇までの道」
4話「難行苦行」  
5話「呼べども」  
6話「あら来てたの」
7話「飲まないの」 

「玄関までの道」
車の入らない家まで続くあぜ道は草の道
田圃は背丈ほどの草
草履の裏を巧に使い、草をなぎ倒し玄関へ、
雨でなくて良かった
雨なら着物は濡れる
今は秋、夏なら蛇がどこにいるかわからない
草にからまれ痛む足
ま いいか

「戸をあけると」
玄関前の鉢植えの花
伸びて伸びて通せんぼ
玄関のすだれをのれんのようにかいくぐり
声をかけれど返事なし
呼び鈴さがせどもない
ピシャンガタンと戸を開ける
鍵がかかってないのは居るはずだ
返事はないけど
ま いいか

「仏壇までの道」
鼻をつき 嗚咽を覚えるひどい臭い
アンモニア 生ゴミ 生活臭?
窓を開けたはいつなの
玄関土間の水たまり?
乾いた処をさがして
「こんにちは」と入る
目前の廊下は濡れ光る
散在するゴミの谷間に
新聞紙
この上を通れと呼んでいる が濡れている
足袋が汚れるが
ま いいか

「難行苦行」
つま先に体重をのせてまず一歩
側面を使いまた一歩
そろりそろりと
足を下ろせる場所をさがし十数歩
声をかれれど返事なし
仏壇の前には座布団が
すでに猫が鎮座して
私の布団と毛繕い
退散いただき裏返す
穴だらけ
ないよりましか
坐れば汚れる
坐るしかなし
ま いいか

「呼べども」
ホコリまみれの仏壇に枯れかけたお花
香爐は枯れ葉にマッチの燃えかす 灰は砂
昨年の盆供物そのまんま
お仏飯は新しい
隣の部屋からテレビの音
呼べど呼べども返事なし
テレビに負けず
大きな声で
お経を始める
気付くかな
ま いいか

「あら来てたのね」
お経の声に気付いたか
人が出てくる気配に一安心
生きていた。
横に鎮座のおばあさん
「気がつかずにすみません」
焼香すませて茶の用意
早く帰りたいけど
ま いいか

「飲まないの 飲めないの」
若い人はコーヒーと
乗せたお盆は小振動
置かれたカップ
縁とコーヒー同じ色
一口飲むなり塩味が
砂糖と塩の入れ間違い
体不自由なお婆ちゃん
心からのもてなしに
有難く 何も言えずに
ま いいか

毎日毎日報恩講参り
お勤めしては、話して次のお家へ
お婆ちゃんお爺ちゃん
たまには若いご婦人と
話がしたい。

一人暮らしの老人がふえました
年に一度のお詣りを
心待ちにしてくださってます
掃除も十分出来ずと
気にされてる心が伝わります
一日一日いのちの灯の尊さを感じます。

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